民泊の家電操作説明、どう渡す?紙・アプリ共有・スマホWebリモコンの選び方

宿泊者に家電の使い方を確実に伝えるには、外国語を含む紙の案内を土台に残し、よく使う家電はスマホのブラウザで開く操作ページにまとめるのが現実的です。スマートリモコンのアプリ共有は、ゲストにアプリのインストールとアカウント作成を求めるため、短期滞在のゲストには負担が大きい方法です。操作ページを入れる場合は、家電を全部見せず、「おやすみ」のようなシーンと必要なボタンだけに絞ると、説明そのものを減らせます。以下、3つの方法の比較と、選ぶときの基準、導入前に決めておくことを順にまとめます。

家電の案内が必要な理由:夜の問い合わせと民泊新法

「使い方が分からない」は夜に起きやすい

家電の問い合わせは、ゲストがチェックインして部屋でくつろぎ始めてから起きます。よくあるのは次のような場面です。

  • エアコンのリモコンのモード表示が読めず、冷房のつもりで暖房を入れてしまう
  • テレビの入力切替が分からず、画面が映らない
  • 照明のスイッチやリモコンがどれに対応しているか分からない

紙のマニュアルは、到着直後にまとめて目を通すものとして置かれがちです。困ったときには「どのページに書いてあるか」を探すところから始まり、家電の機種ごとにボタンの位置も違います。その結果、ゲストはマニュアルを探すよりホストに連絡するほうを選びます。夜中にホストの返信が遅れれば、ゲストは寒い・暑い部屋で待つことになり、滞在の印象にも響きます。

法第7条:設備の使い方を外国語で案内する

家電の案内は、住宅宿泊事業(いわゆる民泊新法)では義務でもあります。住宅宿泊事業法第7条は、外国人観光旅客である宿泊者に対して、設備の使用方法を外国語で案内するなどの措置を求めています。観光庁の民泊制度ポータルでは、必要な措置として「外国語を用いて、届出住宅の設備の使用方法に関する案内をすること」など3つが挙げられています。

ガイドラインで押さえておきたい点は次の3つです。

ポイント 内容
案内の方法 「書面を居室に備え付けることによるほか、タブレット端末への表示等により、宿泊者が…必要に応じて閲覧できる方法」が望ましい
「外国語」の意味 予約の時点で日本語以外として示した言語
日本語を指定した場合 外国人宿泊者が日本語を指定した場合は、外国語での案内は不要

つまり、紙に限らず画面で見られる形でも案内として認められる余地があります。ただし、スマホの操作ページを外国語案内の一部として使うなら、画面そのものがゲストの言語で読めることが前提です。

参考: 住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)令和6年12月24日改正

伝え方は3つ:紙+ラベル/アプリ共有/スマホで開く操作ページ

紙のマニュアル+ラベル スマートリモコンのアプリ共有 スマホで開く操作ページ
ゲストの手間 読むだけ アプリを入れる、アカウントを作る、招待から参加する URLを開いてIDとパスワードを入れる
ゲストのアカウント 不要 必要(メーカーのアカウント) 施設側で発行したものを渡す
外国語 作れば対応できる アプリの表示に依存 画面の対応言語に依存
権限の制限 実物のリモコンなので制限なし SwitchBot は制限付きメンバーで分けられる ゲストは操作だけに限定できる
初期費用と手間 安い。作成と更新に手間 スマートリモコン代。招待の手間が毎回かかる スマートリモコン+設置する機材。最初の設定に手間
弱点 困ったときに探されない。家電を替えるたびに作り直し ゲストが途中で離脱しやすい。退去後の共有解除が必要 状態表示のずれ、短時間の連打で一時的に使えなくなる

アプリ共有がゲストには重い理由

スマートリモコンを入れている施設では、メーカーのアプリでゲストに家電を共有する方法がまず思い浮かびます。ただ、公式の手順を並べると、ゲストがやることは少なくありません。

Nature Remo(ホームシェア) SwitchBot(ホーム共有)
1 Nature Home アプリを入れる SwitchBot アプリを入れる
2 アカウントを作る 事前に SwitchBot アカウントを作る
3 オーナーから届いた招待リンクで参加する オーナーの招待を受けてホームに参加する
注意 招待リンクの有効期限は3日 アプリ9.0以降は「制限付きメンバー」などで権限を分けられる

1〜2泊のゲストにとって、滞在のためだけにアプリとアカウントを用意するのは手間です。Nature の招待リンクは3日で切れるため、予約が早いゲストに事前に送っておくこともできません。SwitchBot は権限を分けられるものの、アカウント作成の手間は変わりません。

参考: Nature 製品・サービスを複数人で共有して使いたい、SwitchBot: How to Join Other User’s Home、SwitchBot: Roles and Permissions (V9.0)

スマホのブラウザで開く宿泊者用リモコン

アプリ共有の手間をなくすため、私たちはスマホのブラウザで開く宿泊者用のリモコンを作りました。ゲストにアプリを入れてもらわないことを前提にしています。

ゲストから見た手順

  1. 施設から渡された URL をスマホで開く
  2. ID とパスワードを入れる
  3. 必要なら「ホーム画面に追加」して、アプリのように使う

アプリ共有の手順と比べると、アプリのインストールとメーカーのアカウント作成がなくなります。ゲストは部屋ごとにまとまった家電のボタンと、シーンのボタンを押すだけです。

ゲストは操作だけ、設定には触れない

権限は3段階に分けています。

権限 できること
管理者 すべて
編集者 機器・部屋・シーン・接続の設定
一般(ゲスト) 操作のみ

ゲストの画面には設定の入口がないため、誤って機器を消したりシーンを書き換えたりすることがありません。

2社の家電を1つの画面に

Nature Remo と SwitchBot の家電を1つの画面にまとめられます。エアコンは Nature Remo、照明は SwitchBot のように両方のメーカーの機器がある施設でも、ゲストにアプリを2つ入れてもらう必要はありません。

動かすのに必要な機材は Raspberry Pi 4 が1台です。外からの接続には Cloudflare Tunnel を使います。外向きの接続だけで動くため、公開 IP を持ったりルーターのポートを開けたりしなくて済みます。

説明を減らすには「ボタンを減らす」

操作ページの効果が一番出るのは、見せるものを絞ったときです。家電のリモコンのボタンをすべて画面に並べると、紙のマニュアルと同じく「どれを押せばいいか分からない」が起きます。そこで、部屋ごとに家電をまとめ、よく使う組み合わせはシーンにします。たとえば「おやすみ」=照明オフ+エアコン27度のように、1つのボタンで複数の家電を動かします。

ゲストに見せるものを決めるときは、次のチェックリストが使えます。

  • [ ] ゲストが滞在中に必ず触る家電か(エアコン、照明、テレビ)
  • [ ] 設定を変えられると次のゲストや施設側が困る機能ではないか(録画、エアコンの細かい設定)
  • [ ] 複数の家電をまとめて動かす場面があるか(例:「おやすみ」「外出」「帰宅」)
  • [ ] ボタンの名前は、メーカーの用語ではなくゲストの行動で書けているか
  • [ ] 部屋の名前はゲストが見て分かるか(リビング、寝室など)

入れる前に知っておきたい注意点

作ってみて分かった、ゲストに使わせるときの注意点です。どれも操作ページに限らず、スマートリモコンをゲストに使わせる場合に共通します。

  • 赤外線の家電は状態がずれる: SwitchBot の赤外線リモコンは家電の状態を読み取れません。そのため画面には最後に操作した内容を出しています。ゲストが本物のリモコンで操作すると、画面の表示と実際の状態がずれます。本物のリモコンも部屋に置くなら、ずれることを前提にしてください
  • 連打すると一時的に使えなくなる: Nature の API は5分以内に30回を超えると一時的に受け付けなくなります。反応がないと感じたゲストがボタンを押し続けると、この上限に届きます。私たちは状態の取得を60秒キャッシュして回数を抑えていますが、その分、画面の表示が最新になるまで少し時間がかかることがあります。SwitchBot の API は1日10,000回までです
  • 入力切替などはアプリ上の名前で登録する: テレビの入力切替のような SwitchBot のカスタムボタンは、SwitchBot アプリで付けた名前のまま登録しないと動きません。アプリ側で名前を変えたら、操作ページ側も合わせます
  • 紙の案内はなくさない: スマホの電池切れやネットの不調はありえます。緊急連絡先、Wi-Fi、操作ページの URL は紙でもすぐ見られる場所に置いてください

参考: SwitchBot API

導入前のチェックリストです。

  • [ ] 画面をゲストの言語で読めるか。読めない場合、外国語の紙の案内で補えているか
  • [ ] ゲストへの ID とパスワードの渡し方を決めたか(チェックイン案内に入れる、室内に掲示するなど)
  • [ ] 宿泊ごとにパスワードを変える段取りがあるか
  • [ ] 状態がずれる機器(赤外線で操作する家電)を把握しているか
  • [ ] 緊急連絡先を、スマホを使わなくても見られる形で置いたか

自分の施設ならどれを選ぶか

施設の状況 向いている方法
部屋数が少なく、家電も少ない。スマートリモコンは未導入 紙のマニュアル+ラベル。外国語版を必ず用意する
長期滞在が中心で、ゲストがアプリを入れる手間をいとわない アプリ共有。退去時の共有解除を忘れない
スマートリモコンを入れている。短期滞在や外国人ゲストが多い 操作ページ+紙。ボタンを絞り、緊急連絡先は紙に残す
Nature Remo と SwitchBot の両方がある 操作ページで1つにまとめる

判断で迷ったら、次の4点を確認してください。

  1. 部屋数と家電の数: 家電が多いほど紙は厚くなり、読まれなくなります
  2. 外国人ゲストの割合: 多いなら外国語の案内が必須です。画面を使うなら表示言語を確認します
  3. スマートリモコンを入れているか: 入れていなければ、まず紙を整えるのが先です
  4. IT作業を誰がやるか: 操作ページは最初の設定と、宿泊ごとのパスワード変更が必要です。担当を決められないなら、紙とラベルで十分です

どの方法を選んでも、紙の案内はなくなりません。スマホの操作ページは紙の代わりではなく、夜中に「どのボタンを押せばいいか」で困らせないための追加の手段です。

ご相談について

NNiNN では、宿泊施設や住まいへのスマートリモコンの導入から、ゲストに見せる家電やシーンの設計までお手伝いしています。家電の案内の方法を見直したい方は、スマートホーム導入のページをご覧のうえ、お問い合わせからご相談ください。